フランス国立サーカス学校CNACのバルバラから「我が校で研修をしているIT学生の海外研修先になってくれないか」とメールを受けたのはいつだったっけ?と調べてみると、2025年2月。そんなに前だったっけ!今が2026年9月なので、1年半も前。
その時は「え?IT研修生?!」と一瞬二度見して、なぜIT?(サーカスの学生ならわかるけど)ということと、私自身があまりにITには疎いので、どんな研修になるのか想像すらつかなかったけれど、チャレンジングなこと、フレッシュなことが好きな性分で、何か新たな扉が開くかもしれないと思い「良いですよ」とすぐに返事を出した。
CNACとはその方向で話が進み始め、次いで間もなく、その研修生トム自身からメールがきた。

「僕の仲間でやはり海外研修を希望しているIT学生2人とともに、3人で行っても良いか?」と。
IT×3人!
もうわけがわからないけど、1人も3人も同じだなと思い、「良いですよ」と返事をした。
それにしてもフランス語と英語でコミュニケートしながらITに取り組むって、ほとんど想像を超えていて、超えすぎていて、想像できなかったから良かったのかもしれない。「未知の世界への好奇心」が、不安や懸念を蹴飛ばしてしまったのだ。
その後、トムとオンラインでミーティングをし、2025年10月には私がフランス・オーシュのフェスで企画プレゼンテーションをするときにフランス東部から飛行機を使って遠路はるばる、3人が会いにきてくれた。
トムはCNACで研修しながら働いているので現代サーカスに馴染みがあるけど、シモンとロエヴァンはほとんどこの世界を知らないと言っていて、彼らにとっても新しい世界への扉が開いていたようだ。
その後も何度もオンラインミーティングを繰り返し、ついに2026年7月に彼らが瀬戸内にやってきた!
ミッションは
・瀬戸内サーカスファクトリーの拠点となる稽古場と宿の予約システム、入退場システムの構築
・瀬戸内サーカスファクトリーのウェブサイトの刷新
この2本が大きな柱である。

こちらサイドでは、私が大きな構造を考え、理事の岩間さんが細かな要件チェックや伝達を行い、事務局の小笹さんが具体的作業を把握する、といった分担をした。
彼らは、私たちが拠点を置く山一木材の敷地内の宿舎に泊まり、日々、宿舎のミーティングルームで黙々と作業を進めつつ、私たちのコアなイベントには必ず参加してくれた。
大阪の劇場で開催した「Workersワーカーズ!」公演にも3人、車で乗り合わせてきてくれたし、山一木材内で行う定期イベントにも顔を出し、手伝ってくれたり、写真を撮ってくれたり、シモンはアーティストの吉田亜希さんの創作にデジタル表現で参加もしてくれた。
ロエヴァンは約2か月、トムとシモンは約3カ月。
前半は比較的緩やかに過ぎていったが、後半に入ると我々も熱が入り、会議は重ねられ、何度も再考、修正を依頼したが、常にポジティブに受入れ、取り組んでくれた。
そして8月後半には、予約システム、ウェブサイトが完成に近づく。
この2つは、ある意味で、瀬戸内サーカスファクトリーが長年願い続けたことの具現といえる。
アーティスト、スタッフ、お客様など多くの人が集まる拠点施設は、山一木材など地元企業の協力をいただいて実現し、それをきちんと運用していくシステムは急務だった。
また、芸術団体である以上、その世界観を伝え、かつ自立のための営業にも役立つ情報を見やすく整理して盛り込んだウェブサイトも悲願だった。
彼らが取り組んでくれたのは、私たちの「夢」や「目標」と直結する部分だった。それが形になった喜びは、言葉で簡単に表現できないほどだ。
ゲストも招いての食事会で彼らが言ってくれた。「僕たちの行ったことが、瀬戸内サーカスファクトリーの発展に少しでも役立てば」と。
出逢いの最初は、どのような成果を目指すのか、互いに何をもたらすのか、正直何もわからなかった。
私たちは現代サーカスや舞台芸術を専門にしているので、同じ分野の人ならばどんな国の人とでも交流でき、期待値もだいたいわかる。
しかしその「測れない未来」に賭けることの意味を、改めて教えてくれたのが、今回の3人の研修生との体験だった。
トム、シモン、ロエヴァン、
本当に来てくれてありがとう。夢をかなえてくれて有難う。あなたたちの努力が私たちの活動に大きな推進力を与えてくれるでしょう。
若い3人のこれからの長い人生を思うと、こちらがワクワクするし、きっと頼りがいのある友人になってくれるだろう、と楽しみでたまらない。



(左からトム、シモン(志門)、ロエヴァン)


